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2017/1/10 火曜日

献上品

Filed under: 未分類 — アートメモリー @ 0:32:37

貨幣経済が浸透しきっていなかった時代、貴重な保存食だった“アワビ”が税として納められていたという記録があります。
主に干物だったようですが、蒸しアワビも利用されました。

干しアワビは、殻や内臓を取り除いた可食部分を薄く剥ぎ、水洗いの後に乾燥させて作ります。
水分が多少残っている生乾きの状態のときに重しをつけて伸ばし、細長くして、固くなるまで乾燥させたものが、税として献上されていたのです。
この献上品は あらたまった席での贈答品の印として、貨幣経済発達後の今日にも伝えられています。
お中元、お歳暮、結婚式などの引き出物などにつける“のし”として。

干しアワビを折りたたんだ四角い色紙に包んだものが、中世の上流階級の間で贈答用として用いられたのです。
武家の出陣、婚礼の祝儀、正月飾り等に使われていました。
時代を経るにつれ、黄色い紙で代用したもの、紙に水引をかけたものへと簡略化されるようになり、現在では殆どが印刷です。

平安時代の《延喜式》にもアワビを干す様子が記されているうえ、宗教行事の供物にもなっていました。
伊勢神宮への供え物として、今も昔ながらの製法で干しアワビは作られているそうです。

このアワビという貝は平たい殻ながらも巻貝の一種で、二枚貝のハマグリの殻のような“貝合わせ”ができません。
『磯のアワビの片想い』といわれる所以です。

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